試用期間の延長はできる?同意・通知書・理由のルールと期間の上限

試用期間ナビ編集部運営:ランドマーク出版
試用期間中に働いている人のために、労働基準法・労働契約法の条文と厚生労働省の資料を確かめて記事を書いています。個別の判断が必要なときは、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士への相談をおすすめしています。
試用期間の延長について、労働基準法や労働契約法には直接の決まりがありません。延長を禁止する条文も、延長できる場合や回数を定めた条文もないため、延長できるかどうかは就業規則や雇用契約書の定め、本人の同意、延長の理由と期間で考えることになります。
長すぎる試用期間は、公序良俗に反してその限りで無効とした裁判例もあります(ブラザー工業事件)。この記事では、試用期間の延長を告げられた人に向けて、延長が認められるかの判断ポイント、延長通知書・同意書で確認すること、同意しない時の考え方を説明し、延長した場合の終わる日を計算できるツールも用意しました。
この記事の要点
- 試用期間の延長を定めた法律の条文はない。就業規則・契約の定め、本人の同意、理由と期間が判断の材料になる
- 就業規則に延長の定めがない時は、延長は契約内容の変更にあたり、同意するかどうかは自分で決められる(労働契約法8条)
- 延長通知書・同意書では、根拠の条文、具体的な理由、新しい終わる日、延長中の目標と評価の時期を確認する
- 延長しても試用期間が長くなりすぎると、公序良俗に反して無効とされることがある
- 延長のあとに本採用しない時も解雇にあたり、合理的な理由が必要。入社14日を超えていれば予告か予告手当も要る
試用期間の延長に法律の決まりはある?
労働基準法で試用期間が出てくるのは、試用期間中の人の解雇予告の例外(21条)と、平均賃金の計算のしかた(12条)の2か所だけです。試用期間の長さや延長を定めた条文はなく、労働契約法には試用期間そのものの規定がありません。
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の試用期間の条文も、試用期間を「短縮し、又は設けないことがある」とは書いていますが、延長の定めは入っていません。延長できるかどうかは、それぞれの会社の就業規則や雇用契約書に何が書かれているかで変わります。
実際にどのくらいの会社が延長しているかについて、2004年の企業調査(労働政策研究・研修機構)では、試用期間を設けている企業のうち、「延長することがあり、ここ5年間に事例がある」が8.6%、「延長することがあるが、ここ5年間に事例はない」が21.5%で、合わせて約3割が延長することがあると答えていました。「延長はしない」は67.8%です。一方で、雇い入れの時に「試用期間の延長の有無」を知らせている企業は26.6%、「延長の判断基準」は14.1%にとどまっていました。延長の決まりは、自分で就業規則を見て確かめる必要があるということです。
よく聞く話と、条文・公式資料での扱い
| よく聞く話 | 条文・公式資料での扱い |
|---|---|
| 試用期間の延長は法律で禁止されていて違法 | 禁止する条文はない。延長について定めた条文もない |
| 会社はいつでも自由に延長できる | 就業規則や契約の定め、本人の同意、理由と期間が問題になる。長すぎる試用期間を無効とした裁判例がある |
| 延長は最大〇か月までと法律で決まっている | 民間の会社の試用期間に上限の条文はない。公務員の条件付採用は、延長しても1年を超えない範囲と法令で決まっている |
| 延長されたら、もう本採用はない | 延長は判断の先送り。延長のあとに本採用しない時も解雇にあたり、合理的な理由が必要(労働契約法16条) |
| 口頭で言われただけの延長は無効 | 書面でなければ無効という条文はない。ただし、労働契約の内容はできる限り書面で確認するものとされている(労働契約法4条2項) |
試用期間の延長が認められるかの判断ポイント
延長が認められるかは、次の4点を順に確かめます。法律に条文がない分、一般にこれらを総合して判断されると考えられています。
- 就業規則・雇用契約書に延長の定めがあるか:労働契約法7条では、会社が合理的な労働条件を定めた就業規則を働く人に周知させていた場合、労働契約の内容はその就業規則によるとされています。「試用期間を延長することがある」といった条文があるかを見ます
- 本人が同意しているか:労働条件は、労使の合意で変えることができます(労働契約法8条)。就業規則に定めがない場合、延長は契約内容の変更にあたるので、同意するかどうかは自分で決められます
- 延長の理由が具体的か:「もう少し様子を見たい」だけでなく、何を確かめるために延長するのかが示されているか
- 期間が長すぎないか:もとの試用期間と延長を合わせて、適性を判断するのに必要な期間を超えていないか
就業規則は、常時10人以上を雇う会社では作成と届け出が義務で、作業場への掲示や備え付け、書面の交付などの方法で働く人に周知しなければなりません(労働基準法89条・106条)。最高裁も、就業規則が拘束力を持つには周知の手続きが必要だとしています(確かめよう労働条件「就業規則の効力」)。見られる場所が分からなければ、人事か総務に「就業規則の試用期間の条文を確認したい」と聞けば足ります。
長すぎる試用期間は無効とされた裁判例
厚生労働省「確かめよう労働条件」で紹介されているブラザー工業事件(名古屋地裁昭和59年3月23日判決)では、見習社員の期間に続けて、試用社員としてさらに長い試用期間を設けたことについて、適性の判断に必要な合理的な期間を超える試用期間は公序良俗に反し、その限りで無効とされました。延長を重ねて試用期間が長くなった時も、この考え方が判断の材料になります。
あなたの状況別|延長の考え方と今日やること
| あなたの状況 | 考え方 | 今日やること |
|---|---|---|
| 就業規則に延長の定めがあり、理由と期間も示された | 延長が認められる方向で考えられやすい | 延長中の目標と、評価の時期・方法を書面で確認する |
| 就業規則に定めはあるが、理由があいまい、期間が長い | 理由や期間によっては問題になりうる | 理由と新しい終わる日を書面で求める |
| 就業規則に定めがなく、同意書へのサインを求められた | 契約内容の変更なので、同意するかは自分で決められる | 条件を書面で確かめてから返事する。その場でサインしない |
| 定めも同意もないのに、一方的に(勝手に)延長と言われた | 延長の根拠がはっきりしない | 就業規則を確認し、不当な延長だと感じたら総合労働相談コーナーに相談する |
| 延長が何度も続き、試用期間が長くなっている | 長すぎる試用期間は無効とされた裁判例がある | 入社日からの合計の期間と、各回の理由を書き出して相談する |
試用期間の長さの目安と、法律上の上限の考え方について詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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延長通知書・同意書で確認すること
延長を告げられたら、口頭だけで済ませず、延長の手続きとして試用期間延長通知書や同意書(合意書)などの書面をもらい、内容を残します。受け取った書面では、次の項目を確認します。
- 根拠:就業規則の何条に基づく延長か
- 理由:何を確かめるための延長か(例:担当業務を一人でこなせるかの確認、欠勤が続いて判断する材料が足りない、など)
- 期間:延長はいつからいつまでか。新しい終わる日が日付で書かれているか
- 延長中の目標:何を、どの水準までできれば本採用になるのか
- 評価の時期と方法:いつ、誰が、何を基準に判断するのか
- 延長中の労働条件:給料・手当・社会保険・仕事の内容が、これまでと変わるか
- 書面の文言:「延長後に本採用しなくても異議を述べない」など、自分に不利な約束が書かれていないか
延長について定めた法律の条文がないので、延長の通知をいつまでにしなければならないかも、法律では決まっていません。もとの試用期間の終わる日を過ぎてから延長と言われた場合は、すでに本採用になっているのではないかという点も含めて、相談先で確認してください。
延長同意書にサインする前に確認する例文
試用期間の延長のお話について、内容を確認させてください。延長の根拠となる就業規則の条文と、延長の理由、延長後の終わる日を書面でいただけますでしょうか。あわせて、延長期間中にどのような点をどの水準までできれば本採用となるのか、評価の時期と方法も教えていただけますと幸いです。内容を確認したうえで、〇日までにお返事いたします。
延長の理由に納得できない時の伝え方
延長の理由として〇〇とのご説明をいただきましたが、〇〇については〇月〇日以降、〇〇の方法で改善に取り組んできました。延長が必要と判断された具体的な点を、改めてお示しいただけないでしょうか。
延長に同意しない・延長を拒否するとどうなる?
就業規則に延長の定めがなく、同意を求められている場合は、延長に同意しないこともできます。労働条件の変更は合意によるのが原則だからです(労働契約法8条)。一方、就業規則に合理的な延長の定めがあり、周知もされている場合は、個別の同意がなくても延長が認められることがあると考えられています。厚生労働省の裁判例のまとめでも、就業規則は内容が合理的なものである限り、個々の人が同意していなくても当てはまると整理されています。
延長に同意しなかった場合、会社はもとの終わる日に、本採用にするか、本採用を見送るかを判断することになります。本採用を見送るなら、それは解雇にあたり、試用期間中の働きぶりなどについて客観的に合理的な理由が求められます(労働契約法16条)。
| 比べる点 | 延長に同意する | 延長に同意しない |
|---|---|---|
| 雇用 | 延長の期間も続く | もとの終わる日に、本採用か本採用見送りかの判断になる |
| 本採用の機会 | 延長中の改善しだいで本採用になりうる | 会社の判断しだい。見送りなら解雇としての理由が要る |
| 不安定な期間 | その分長くなる | 長くならない |
| 気をつけること | 目標と評価の時期を書面で決める | 見送られた時は、解雇理由証明書を請求する(労働基準法22条) |
どちらがよいかは、延長の理由に納得できるか、延長中に改善できる見込みがあるかで変わります。迷う時は、返事の期限を確認したうえで、総合労働相談コーナー(無料・予約不要)に相談してから決めても構いません。
本採用見送りになった時の理由の確かめ方と、告げられた日にやることについて詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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能力不足を理由に試用期間を延長された時
延長の理由が「能力や適性をもう少し見たい」というものだった場合は、延長期間中に次の3つを進めます。
- 目標を具体的にする:どの業務を、いつまでに、どの水準でできればよいかを、上司とすり合わせてメールで残す
- 記録をつける:受けた指導、できたこと、改善したことを日付とともに書き留める
- 途中で評価を聞く:延長の終わりを待たず、半分ほど過ぎた頃に進み具合を確認してもらう
延長のあとに能力不足を理由に本採用を見送る場合も、その程度や、指導などで改善を図ったかが問われます。
能力不足を理由にした解雇が認められるかの判断ポイントと、言われた時の対処について詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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試用期間の延長はいつまで?期間の上限と再延長
民間の会社の試用期間には、延長を含めて上限を定めた条文はありません。ただし、前に紹介したブラザー工業事件のように、長すぎる試用期間はその限りで無効とされることがあります。厚生労働省のモデル就業規則の解説も、試用期間中は働く人の地位が不安定になるので、あまりに長い期間を試用期間とすることは好ましくないとしています。再延長を重ねる場合は、もとの試用期間と合わせた長さを意識してください。
公務員は、民間の試用期間とは別の「条件付採用」という仕組みで、延長の上限が法令で決まっています。
| 区分 | 条件付採用の期間と延長 |
|---|---|
| 地方公務員 | 6か月。人事委員会規則などの定めにより、1年を超えない範囲で延長できる(地方公務員法22条) |
| 国家公務員 | 6か月。その間に実際に勤務した日数が90日に満たない時は、90日に達するまで続く。ただし開始から1年を超えない(人事院規則8-12 第34条) |
延長した場合の終わる日を計算する
入社日と試用期間の長さ、延長の月数を入れると、延長した場合の試用期間の終わる日が分かります。延長は、もとの終わる日の翌日から数えています。
たとえば2026年4月1日入社で試用期間が3か月なら、民法の数え方では6月30日に終わります。1か月延長すると7月31日、2か月延長すると8月31日が終わる日の目安です。入社日を1日目として数え(民法140条ただし書)、月で決めた期間は最後の月の同じ日の前日に終わります(民法143条2項)。延長通知書に終わる日が書かれていれば、その日付が基準です。
試用期間が終わったあとの本採用の通知や手続きについて詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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延長中の給料・社会保険・有給休暇
延長の期間中も、労働契約は続いています。お金と保険の扱いで確認したいのは次の点です。
| 項目 | 延長中の扱い |
|---|---|
| 給料 | 試用期間中の給料が本採用後と違う会社では、延長中にどちらの額になるかを書面で確認する。試用期間中でも、都道府県労働局長の許可がない限り、最低賃金を下回ることはできない(最低賃金法7条) |
| 健康保険・厚生年金 | 加入しない人として法律に書かれているのは、2か月以内の期間を決めて雇われ、それを超えて雇われる見込みのない人などで、試用期間であることは除外の理由に書かれていない(健康保険法3条、厚生年金保険法12条)。延長中も、条件に当てはまれば加入する |
| 有給休暇 | 雇入れの日から6か月続けて勤務し、8割以上出勤すると付く(労働基準法39条)。試用期間も延長の期間も、雇入れの日から数える |
試用期間中に社会保険に入れてもらえない時の確認点について詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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延長されたら辞めるべき?延長のあとに解雇された時
試用期間を延長されると「もう本採用はないのでは」と不安になりますが、延長は本採用にするかどうかの判断を先に延ばすことで、本採用見送りが決まったという意味ではありません。延長の理由と目標を確かめたうえで、続けるかどうかを考えます。
延長後の解雇(延長のあとの本採用見送り)も、解雇であることに変わりはありません。入社から14日を超えているので、30日前の予告か、足りない日数分の解雇予告手当が必要で(労働基準法20条・21条)、解雇の理由を書いた証明書も請求できます(同22条)。
延長をきっかけに辞めたいと考えた時は、期間の定めのない契約なら、いつでも退職を申し出ることができ、申し出から2週間で契約が終わります(民法627条1項)。
試用期間中に辞めるか続けるかの判断のしかたについて詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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よくある質問
試用期間の延長について、知恵袋などのQ&Aサイトでもよく見かける疑問に答えます。
延長を口頭で言われただけです。延長は有効ですか?
書面でなければ延長が無効になるという条文はありません。ただ、労働契約の内容はできる限り書面で確認するものとされています(労働契約法4条2項)。延長の根拠・理由・新しい終わる日を、メールや書面でもらってください。
パートやアルバイトでも試用期間は延長されますか?
正社員でもパートでも、延長の考え方は同じで、就業規則や契約の定め、同意、理由と期間が問題になります。契約期間が決まっている場合は、延長後の終わる日が契約期間を超えないか、契約の更新とどう関係するかもあわせて確認します。
本採用は難しいと言われました。自分から延長をお願いできますか?
自分から試用期間を延長したい時も、延長は会社との合意で決めることなので、お願いすること自体はできます。その場合も、延長の期間と、何ができれば本採用になるのかを書面で決めておきます。
本採用が難しいとのご判断について、ご指摘の点を改善する機会をいただきたく、試用期間の延長をご検討いただけないでしょうか。延長期間中の目標と評価の時期をお示しいただければ、それに向けて取り組みます。
試用期間の延長について、判例はありますか?
厚生労働省「確かめよう労働条件」の試用期間の裁判例ページで紹介されているのは、神戸弘陵学園事件とブラザー工業事件の2件です。どちらも延長そのものを扱った判例ではありませんが、長い試用期間の考え方としては、この記事の「長すぎる試用期間は無効とされた裁判例」で紹介したブラザー工業事件が参考になります。
試用期間の「14日目」と「終わる日」の計算ツール
14日は土日・祝日も含めた暦の日数です。試用期間の終わる日は民法の数え方(入社日を1日目として、◯か月後の同じ日の前日に終わる。同じ日がない月はその月の末日)で出しています。雇用契約書や就業規則に終わる日が書いてあれば、そちらを確認してください。
- 労働基準法(e-Gov法令検索)第12条・第20条・第21条・第39条・第106条
- 労働契約法(e-Gov法令検索)第4条・第7条・第8条・第16条
- 民法(e-Gov法令検索)第140条・第143条・第627条
- 最低賃金法(e-Gov法令検索)第7条
- 健康保険法(e-Gov法令検索)第3条
- 厚生年金保険法(e-Gov法令検索)第12条
- 地方公務員法(e-Gov法令検索)第22条
- 人事院規則8-12(職員の任免)(e-Gov法令検索)第34条
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例 試用期間(神戸弘陵学園事件・ブラザー工業事件)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例 就業規則の効力
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A 給料のことで就業規則を見たいのですが。
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A 会社から解雇予告を受けました。解雇理由の証明書を請求できますか?
- 厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)第6条 試用期間
- 労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(調査シリーズNo.4・2005年)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」



