正社員の試用期間中は正社員じゃないの?立場と本採用後に変わること

働き方別(正社員・バイト・パートなど)

試用期間中は正社員じゃない?正社員としての立場と本採用後の違い

更新日 2026-10-05

試用期間中は正社員じゃない?正社員としての立場と本採用後の違い(試用期間ナビの記事)
試用期間ナビのロゴ

試用期間ナビ編集部運営:ランドマーク出版

試用期間中に働いている人のために、労働基準法・労働契約法の条文と厚生労働省の資料を確かめて記事を書いています。個別の判断が必要なときは、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士への相談をおすすめしています。

正社員として採用されたなら、試用期間中もすでに正社員の労働契約の中にいます。試用期間は、その契約の最初の期間で、会社が適性を見て本採用するかを判断する期間です。

本採用後との主な違いは、本採用しない判断(解約)が本採用後の解雇より広く認められることと、入社から14日以内は解雇予告が要らないことの2つです。残業代・社会保険・自分から辞める時のルールは変わりません。ただし、試用期間の分だけ「契約社員」などの有期契約にしている会社では、試用期間中は正社員の契約ではないので、労働条件通知書の契約期間の欄で確かめてください。

この記事の要点

  • 「正社員」は法律で決まった言葉ではない。自分の立場は、求人票と労働条件通知書の雇用形態・契約期間の欄で確かめる
  • 期間の定めのない契約で採用され、最初の数か月が試用期間なら、試用期間中も正社員の契約が続いている
  • 本採用後との違いは、解約が広く認められること(理由は必要)と、入社14日以内は解雇予告が要らないこと
  • 残業代・社会保険・自分から辞める時のルールは、試用期間中も本採用後も同じ
  • 試用期間の分だけ有期契約(契約社員)なら、試用期間中は正社員ではない。本採用の時に新しい契約を結ぶ

試用期間中は正社員じゃない?正社員として採用されたなら、試用期間中も正社員

「正社員」は法律の言葉ではなく、契約の中身で決まる

「正社員」という言葉は、法律で定義されていません。国の統計でも、正規か非正規かは、勤め先での呼び方(「正規の職員・従業員」「契約社員」「アルバイト」など)で分けています(厚生労働省「非正規雇用」の現状と課題)。

そのため、自分が試用期間中に正社員かどうかは、「会社がどの雇用形態で、どんな契約期間で採用したか」で確かめます。見る書類は、求人票と、入社の時に受け取る労働条件通知書(雇用契約書)です。

試用期間は「正社員の契約の最初の期間」

労働契約は、働くことと賃金を払うことに双方が合意すれば成立します(労働契約法6条)。正社員として採用された時点で、契約はもう始まっています。

最高裁の神戸弘陵学園事件は、試用期間付きの契約を、特段の事情がない限り、会社が解約する権利を残した契約(解約権留保付きの契約)と解しています。三菱樹脂事件(最高裁)は、こうした解約権を残すのは、採用した時点では適格性を判断する材料を十分に集められないため、最終的な判断をあとに残す趣旨だとしています。

つまり試用期間は、「正社員になる前のお試しの雇用」ではなく、正社員の契約に、会社の判断を待つ期間が付いている状態です。

自分の立場を確かめる早見表

求人票・労働条件通知書の書き方 試用期間中の立場 本採用の時
雇用形態:正社員/契約期間:期間の定めなし/試用期間3か月 正社員(試用期間中) 同じ契約がそのまま続く
雇用形態:契約社員(試用期間)/契約期間:〇月〇日〜〇月〇日 有期契約の契約社員 正社員の契約を新しく結ぶ。条件を書面で確かめる
雇用形態:アルバイト・パート(正社員登用あり) アルバイト・パート 正社員への登用は、別の契約の話になる
書面がなく、どれか分からない 求人票の条件が契約の内容になるのが原則 会社に労働条件通知書を求める

求人票の労働条件は、採用の時に別の合意をしたと認められる特段の事情がない限り、労働契約の内容になるとされています(厚生労働省「確かめよう労働条件」の裁判例の整理)。正社員の求人に応募したのに、入社の時の書面が「期間の定めあり」になっている時は、サインする前に理由を聞いてください。

正社員の募集なのに試用期間だけ契約社員になっている場合について詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい試用期間だけ契約社員はやめとけ?会社がそうする理由と入社前の確認試用期間だけ契約社員として雇う求人は、それだけで違法とも、やめとけとも言えません。会社がこの形をとる理由、正社員の試用期…

試用期間中と本採用後で変わること・変わらないこと(早見表)

期間の定めのない契約(正社員)で、最初の数か月が試用期間の場合の違いです。

項目 試用期間中 本採用後 根拠
契約 正社員の契約(期間の定めなし) 同じ契約が続く 神戸弘陵学園事件
会社から辞めさせる時 本採用後より広い範囲で認められる。ただし客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要 客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要 三菱樹脂事件・労働契約法16条
解雇の予告 入社から14日以内は不要。14日を超えたら原則として30日前の予告か予告手当 原則として30日前の予告か予告手当 労働基準法20条・21条
給料 労働条件通知書で決めた額。試用期間中だけ低い額にすることもある 労働条件通知書で決めた額 最低賃金を下回るには労働局長の許可が必要(最低賃金法7条)
残業代 法定の時間外・休日労働には割増賃金 同じ 労働基準法37条
社会保険・雇用保険 加入条件を満たせば入社日から加入 同じ 健康保険法35条・雇用保険法6条
賞与 賃金規程などの会社の決まりしだい 同じ 確かめよう労働条件(賞与)
自分から辞める時 申し出から2週間で契約が終わる 同じ 民法627条1項

試用期間中の「解約が広く認められる」は、自由にクビにできるという意味ではありません。三菱樹脂事件は、残した解約権を使えるのは、解約権を残した趣旨・目的からみて、客観的に合理的な理由があって、社会通念上も相当といえる場合に限られるとしています。

労働政策研究・研修機構が2004年に企業に行った調査では、本採用の時に業務の内容が「変化しない」企業が87.7%、賃金が「特に変化しない」企業が59.6%(「手当などが増える」24.0%、「昇給させる」11.3%)でした。賃金が変わるかどうかは会社によるので、労働条件通知書の賃金の欄で、試用期間中と本採用後の額を確かめます。

試用期間中の給料が本採用後より低い場合のルールについて詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい試用期間の給料・時給は下がる?違法になる減額と本採用後の変化試用期間の給料を本採用後より低く決めること自体は違法ではありません。ただし最低賃金割れ(許可なし)、求人や労働条件通知書…

「試用期間中は正社員扱いしない」と言われた時に確かめること

「試用期間中だから」という理由で、本採用後と違う扱いをされることがあります。法律で決まっていることと、会社の決まりしだいのことを分けて確かめます。

言われたこと 確かめること・相談先
試用期間中は社会保険に入れない 健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法の適用除外に「試用期間中」は書かれていない。加入条件を満たす働き方なのに入っていなければ、年金事務所(健康保険・厚生年金)やハローワーク(雇用保険)に相談できる
試用期間中は残業代が出ない 法定の時間外労働には割増賃金が必要(労働基準法37条)。払われなければ労働基準監督署に相談できる
試用期間が終わるまで有給はない 年休は雇入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると付く(労働基準法39条1項)。試用期間が終わったところから数え直すわけではない
試用期間中はボーナスの対象外 賞与は、会社の決定や労使の合意などで算定の基準・方法が決まって初めて請求できるとされている。対象になる時期を賃金規程で確かめる
試用期間中は契約社員 労働条件通知書の契約期間の欄を見る。「期間の定めあり」なら有期契約

賞与は法律で支給が決まっているものではないので、会社の決まりしだいで「試用期間中は対象外」とすることもありえます。一方、社会保険と残業代は法律の決まりなので、「試用期間だから」は理由になりません。

試用期間中のボーナスの扱いと、査定期間との関係について詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい試用期間のボーナス・賞与は出る?査定期間と支給日在籍の関係試用期間中のボーナス・賞与は法律で支給が義務づけられたものではなく、就業規則・賃金規程・労働契約の決まりで出るかどうかが…

試用期間が終わったら正社員?本採用の流れ

期間の定めのない契約なら、試用期間が終わっても新しく契約を結ぶわけではなく、同じ契約がそのまま続きます。本採用の通知書や辞令を出すかどうかは、会社によって違います。

一方、「試用期間から正社員になる」と説明されていて、試用期間の分だけ有期契約(契約社員)にしている場合は、期間が終わる時に正社員の契約を新しく結ぶことになります。その時は、雇用形態・契約期間・賃金・仕事の内容が書かれた労働条件通知書を受け取り、求人票で約束された条件と同じかを確かめます。

試用期間が終わった時の本採用の通知や手続きについて詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい試用期間が過ぎたらどうなる?本採用の通知・手続きと給料の変化試用期間が過ぎたら、会社が本採用しないと決めていない限り、同じ労働契約のまま本採用として働き続けるのが基本です。本採用の…

試用期間後に正社員にしない(本採用しない)と言われたら

正社員の契約の試用期間で本採用しないことは、会社が残していた解約権を使うことで、法律上は解雇に当たり、先ほどの三菱樹脂事件のとおり、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。入社から14日を超えていれば、原則として30日前の予告か解雇予告手当が必要で(労働基準法20条・21条)、予告された日から退職の日までに、解雇の理由を書いた証明書も請求できます(同法22条2項)。納得できない時は、総合労働相談コーナー(各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などにあり、予約不要・無料)に相談できます。

本採用見送り(本採用拒否)の理由と、された時の対処について詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい試用期間の本採用見送り(本採用拒否)とは?理由と、された時の対処試用期間の本採用見送り(本採用拒否)は法律上は解雇にあたり、合理的な理由がなければ認められません。見送りの理由になりやす…

正社員の試用期間の長さ|3ヶ月が多く、6ヶ月の会社も

前出の2004年の調査では、正社員の試用期間は「3か月程度」が新卒69.1%・中途68.1%で最も多く、次が「6か月程度」(新卒12.2%・中途10.9%)でした。長さを決めた法律はありませんが、適性の判断に必要な合理的な期間を超える長い試用期間は、公序良俗に反してその限りで無効とされた裁判例があります(ブラザー工業事件)。

正社員で6ヶ月・1年の試用期間を示された時の見分け方について詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい試用期間6ヶ月はやばい?長い理由と、注意したい会社の見分け方試用期間6ヶ月は法律で禁止された長さではなく、それだけでやばい会社とは言えません。半年・1年と長くする理由、1ヶ月など短…

正社員の試用期間中に辞めたい時

正社員(期間の定めのない契約)なら、試用期間中でも、退職を申し出た日から2週間で契約が終わります(民法627条1項)。本採用後と同じルールです。

試用期間の分だけ有期契約(契約社員)の場合は、やむを得ない事由がある時に、直ちに契約を解除できます(民法628条)。また、明示された労働条件が事実と違っていた時は、すぐに契約を解除できます(労働基準法15条2項)。

辞める前に、就業規則の退職の手続きと、最後の給料・社会保険の切り替えの時期を確かめておきます。

試用期間中に辞めるか続けるかの判断のしかたについて詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい試用期間で退職したい時の判断基準|続けるか辞めるかの分かれ目試用期間で退職したいと思った時に、続けるか辞めるかを決める目安を、辞めたい理由別の判定表で整理します。体調や違法な扱いが…

よくある質問

正社員なのに試用期間がない会社もありますか?

あります。前出の2004年の調査では、試用期間が「ない」企業は25.7%でした。厚生労働省のモデル就業規則も、会社が特に認めた時は試用期間を短くしたり、設けなかったりできる形になっています。試用期間がない場合は、入社日から本採用後と同じ扱いになります。

試用期間中に休みすぎるとどうなりますか?

欠勤が続くと、本採用の判断で勤務態度として見られることがあります。厚生労働省のモデル就業規則は、解雇の事由の1つに、試用期間中の作業能率や勤務態度が著しく不良で不適格と認められた時を挙げています。体調不良などで休む時は、始業前に連絡し、続く時は早めに上司に相談してください。

試用期間が延長されたら、すぐに辞めるべきですか?

すぐに決める必要はありません。延長の理由、延長後の期間(いつまでか)、就業規則に延長の決まりがあるかを書面で確かめてから判断します。延長の間も、正社員の契約は続いています。

試用期間中でも「正社員です」と言っていいですか?

正社員(期間の定めのない契約)として採用されていれば、試用期間中も正社員の契約の中にいるので、そう説明して差し支えありません。ローンや賃貸などの審査で雇用形態や勤続年数を聞かれた時は、試用期間中であることも聞かれたとおりに答えます。

出典